プレイ
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レビュー感想
ノベルにも流行り廃りがあるけど、本作はそんな喧騒から切り離された世界にあった。
ジャンルは長編ホラーノベルで、内容は地方のド田舎でニートの主人公が奔走する物語。
本作は連載もので、現在は4章までプレイできる。
久々に面白いノベルを発掘してしまった。
厳密に言えば2020年から連載が始まって、その間に感想もぽつぽつと書かれてはいる。
だけどこのゲームのポテンシャルなら、もっと評価されていいんじゃないか。
それこそ類似作を挙げるなら、『死月妖花』に最も近いフリーホラーノベルかもしれない。
もっといえば、それを15歳くらい若返らせたようなノベルだった。
例えば本作はホラーだけでなくミステリーもあり、超常現象にも一定の法則がある。
どこまでが人為的な犯行で、どこからが超現実なのか……。
それを推理していく感覚は、まさにあの時の体験を想起させるものがあった。
……とはいえ実際にプレイして、評価されてない理由も理解してる。
最大の理由は主人公の性格に難があることで、とにかく思考がネガティブ。
それこそ一定数のプレイヤーがそこで脱落してそうだ。
だけど個人的にはそれも含めてこのゲームの魅力だと思ってる。
確かに歪んでると思ったし共感できないところも多々あったけど、それでも他人の意見として理解もできる。
何より主人公がよくある善人像を当てはめたような性格だったら、ここまで没入してなかった。
賛否はあれど、企業の長編ノベルの劣化コピーにはならない魅力が本作にはある。
一方で本作は尖るだけでは終わらないし、むしろ昨今の流行を鑑みれば、実は言うほど尖ってない。
それよりも本作の質を本当に支えてるのは、近年稀に見る上質なホラーノベル体験だろう。
大前提として本作はホラーノベルだけど、これが相当怖い。
それこそホラーノベルでここまで怖いのは『死月妖花』以来だし、もしくはそれ以上。
そしてもう一つ嬉しい誤算だったのは、日常パートも面白い。
一見すると一昔前の古さを感じるけど、よくよく見ると令和らしさもあって、不思議と飽きずに読める。
地方のディティールも細かくて、ともすれば生々しさすら感じられた。
更にただ読むだけのノベルではなく、所々で探索パートが挿入されるのも良かった。
総評すると主人公の性格に難はあるけど、それを超えた先に上質なホラーノベル体験が待ってる。
本作はまさにそんなノベルだった。
評価A 80点
コラム
ちなみに本作はYU-RISという制作ツールで作られてて、コンフィグでフォントを変更できる。
ただ実際に変更してみると、ほとんどのフォントは字が小さくなってしまう。
そして色々試した結果、「スマートフォントUI」というフォントは字が小さくならなかった。
デフォルトのフォントが嫌な人にはおすすめします。