https://ackkstudios.itch.io/yiik-a-postmodern-rpg
https://store.steampowered.com/app/459080/YIIK_A_Postmodern_RPG/
レビュー感想
結論から言うと、このYIIKという創作物は怪作であり、そして名作でもあった。
率直に言って、とにかく凄まじいプレイ体験だった。
あまりこういう言い方は好きじゃないけど、作者のスピリットをもろに喰らった。
星の数ほどあるゲームの中でも、このプレイ体験ができるのは唯一無二だろう。
もちろん単に変わった切り口や、斬新なギミックがあるだけじゃない。
純粋にゲームとして面白いし、何よりその内容に深く刺さるものがあった。
正直本作は完成度が高すぎて、当サイトで扱うのはレギュレーション違反じゃないかという思いもあった。
だけどこのゲームこそ、当サイトで名作と評価するにふさわしいゲームだと思い直した。
本作をあえて一言で述べるなら、フリーゲームの最終進化形態のようなゲームだった。
ターン制RPG、ホラー要素、見下ろし探索、日本的な作風、……そして鋭利な尖り。
このゲームにはそれらが全て入ってて、その上で全てが高水準。
BGMも良曲揃いなので、気になる人はBandcampで視聴してみてほしい。
何より有料でありながら、何者にも屈しないインディペンデントを強く感じた。
尖ったゲームは無料だから作れるとよく言われてるけど、このゲームをプレイしたらそんな定説さえ覆る。
中でも最も評価したいのは、やはり主人公に深く刺さり、そして抉られたこと。
具体的には主人公とこれ以上ないほどシンクロした。
ここまでシンクロできたのは、それこそ『貴方の価値を教えてくれ』以来だ。
随所に挿まれる主人公の語りは、シニカルでありながら核心的で、ある意味このゲーム最大の見所。
……正直プレイしてて辛くなる瞬間も何度かあった。
だけど最終的にはその辛さ以上に、「理解してくれて嬉しい」という気持ちが勝った。
リメイク
そんな大絶賛してる本作だけど、実はリリースされた2019年当時の世間の評価は微妙だった。
といっても、その理由も理解はできる。
当時はダッシュ機能すらなかったし、戦闘システムも面倒な仕様。
いくら核心部分が面白くても、脇が甘ければ評価は下がってしまう。
それと本作はシュールなバカゲーでもあるから、ネタとして低評価された部分もあったかもしれない。
そういった批判を受けて、5年後の2024年に待望のリメイク版が出た。
中でも大きく変わったのは、評価の低かった戦闘システムが刷新されて一転して面白くなったこと。
具体的にはミニゲームが廃止されて、代わりにカルタが導入された。
イメージとしては王道RPGとデッキ構築の中間ような感じだ。
他にもマインドダンジョンというエリアが3Dプラットフォーマーになったのも良かった。
戦闘や店のUIも斬新な仕様になり、それこそ文字通り唯一無二。
一方でストーリーはリメイク後も変わらず難解……どころか、更に難解さが増した。
率直に言って、本作のストーリーは人を選ぶと思う。
これに関しては「世界が壊れてるから設定が無茶苦茶」と割り切ってプレイした方がいいかもしれない。
逆に物語や設定は細部まで理解できないと気が済まない人には厳しいかも。
とはいえ比率でいえば王道RPGが多くを占めてるので、変に気にしなければ問題なくプレイできる。
それでも気になる人は、FandomというWikiサイトに色々載ってるので、読んでみるのもありかもしれない。
S 90点
考察
ここからはネタバレを気にせずYIIKについてあれこれ語ってみる。
評価ではないので読みたい人だけ読んでほしい。
他の人の感想を読んでみたら、主人公のことを性格の悪いオタクと捉えてる人がいて驚いた。
個人的には「今回の主人公だけは奇跡的に闇堕ちしなかった」と捉えてプレイしてた。
オタクというのも、むしろ仲間の方がそれっぽかったし、特には感じなかった。
とはいえ特定のプレイヤーにとっては、そういう風に解釈して初めて刺さったのかもしれない。
少なくとも本作の主人公には、多くの人が自分事のように思える強烈な普遍性があるのは確かだ。
YIIKがエヴァという感想もあったけど、それはプレイしながら何となく思ってた。
といってもエヴァのことは詳しくなくて、ストーリーがあるようでないところが似てる程度の認識。
実はこれまでは「ストーリーがあるようでない物語」が何なのか、いまいちピンときてなかった。
それがYIIKを通して「こういうことだったのか」と感じられたし、これは個人的には大きな収穫だった。