プレイ
https://www.freem.ne.jp/win/game/19062
実況
https://www.youtube.com/playlist?list=PL_P_LqURxB4OCBPR-np_sk-8H9s8pd7Kd
レビュー感想
私が行う殺人は、復讐などではない。
人生に決着をつけるための、謀殺である。
そんな主人公の独白から始まる群像劇ミステリー。
実はこのゲーム、名作であると同時に推しのゲームでもあります。
評価と推しが別物だとすれば、本作の推し度は最上位。
他のどの名作よりも多くの人にプレイしてほしいゲームです。
プレイしてまず目を引いたのは、前作『絆輝探偵事務所』からの作者の成長だった。
この作者は次も良作を出してくるだろうとは思ってたし、欲をいえばもっと上に行ってほしいとも思ってたけど、その期待すら大きく上回る名作を出してきたことには心底驚いた。
まず単純に完成度が劇的に上がった。
キャラグラは文句なしだし、マップも手書き。
それでいて冒頭の引きやボイスの使い方などは、前作同様センスの塊を感じた。
ゲーム面ではADVでありつつも、ストーリーとは無関係な探索や謎解きがほとんどないのが良かった。
それでいてただ読むだけのゲームにもなってなくて、一部難易度の高いところもある。
だけどあれは現実でやっても高難易度で、むしろ物語と重なり合ったゲーム性になってて、そこも良かった。
一方でこのゲームの本質的な面白さを言語化するのは中々難しい。
それでもあえていえば、普段触れてるADVやノベルとは、面白さの方向性が少し違うのかもしれない。
例えば『絆輝探偵事務所』のレビューでも書いたけど、この作者の描く学生はちゃんと学生してる。
他作品との比較でいえば、『キミガシネ』や『朝溶けの魔女』のようなプロの面白さというより、むしろプロを目指してる作家ような面白さに近い。
実際シナリオには粗がそれなりにあって、必要とはいえないシーンも結構あるし、視点移動が多めで読みやすさにもやや難がある。
それでも本作の評価が一切揺らがなかったのは、ちゃんと自前の面白さを確立してるからだろう。
本作は普通に評価しても相当な上位だが、ある点では更に群を抜いてるところがある。
それはプレイヤーと主人公とのシンクロ率が、他の名作の追随すら許さないほど高いこと。
そもそもキャラに感情移入できる創作自体そんなに多くないし、できる時点で水準を満たした傑作といえる。
だからこそ感情移入を通り越して、シンクロすらできる本作の主人公は、まさに異次元だった。
何というか「分かる」を通り越して「分かってくれて嬉しい」という気持ちすら覚えてしまった。
中でも終盤の殺人衝動に駆られつつも寸でで踏みとどまるシーンは、実際にプレイしてて「うわあああ……」ってなったほど。
あれは善意でやめた訳ではなく、色々考えた結果やっぱり無理ってなったことが嫌でも伝わってきて、ストーリー的にはエンタメに振ってるはずなのに、妙な生々しさがあった。
何より凄いのは、あのシーンは他の作者なら絵面を気にしてナイフとかを持たせるところを、本作ではスイッチを押すだけで殺人を遂行できる環境が用意されてるんだけど、そこまでお膳立てされても実行に移せない主人公を見て、逆に心の奥底にくるものがあった。
ちなみにこのシンクロ率の高さはかなり意図して作られてるように感じました。
なので偶然私に刺さったのではなく、本作は多くのプレイヤーに刺さるんじゃないかと思います。
S 90点