https://usjk0ec.itch.io/codename-alton
レビュー感想
本作のテーマは大きく2つある。
一つはフリーゲームの花形でもある家族。
そしてもう一つは、フリーゲームではややマイナージャンルである百合。
そんな意外な組み合わせが、予期せぬ相乗効果を生んでプレイヤーを待ち受ける。
いきなり総評から書くと、本作は小粒の良作だった。
プレイ時間こそ1時間と短編ながら、終わってみれば充実した読後感。
短い中にもカタルシスあり、考察の余地ありと、まさに短編のお手本のようなシナリオだった。
ディティールやRPG要素こそ大味だったけど、全体的にシナリオの魅せ方も上手だったし、ゲームとしての面白さも体験できた。
中でも物語のクライマックスだと思ってた場面で、とある選択肢を選んだら、そこから新たな物語が幕を開けたのは本当に予想外。
「まだ真のエンディングがあるはず」となって、そこから延長戦に入るゲームは過去にも色々プレイしたけど、本作はそれらと違って意表を突かれた。
だけどこのゲームの真髄は、やはり家族を主軸とした憎悪と復讐にこそあると思ってる。
スケールこそ違えど、類似作を挙げるなら『夜底奇劇・星空物語』に近いエッセンスを感じた。
本作には主人公交代もあるし、そこも似てる。
個人的には小粒の良作と評したけど、人によっては相当な高評価になるかもしれない。
そんなポテンシャルを秘めた意欲作だと思った。
そしてもう一つ隠れた見所があって、なんとこのゲームにはトゥルーエンドが2つ存在する。
内容的には会話が少し変わるだけなんだけど、その些細な違いが非常に厄介。
物語の根幹を揺るがしかねない変化で、プレイヤーは否が応でもそれについて考えざるを得なくなる。
実際それによって、何が真実か分からなくなってしまったし、誰が正しかったのかも揺らいでしまった。
正直この記事を書いてる今も、明確な答えは出てない。
一応こうじゃないかという予想はあるけど、それが当たってるかどうかは作者のみぞ知る……。
C 60点
コラム
ちなみにこのゲームに百合である必然性はあったかと問われると、個人的には「あまりない」ように感じた。
……だけど人によっては「大いにある」と感じる人もいるかもしれない。
中には「父と子の物語」と「母と子の物語」を、全く別物と認識してる人もいる……と聞いたことがあります。