https://freegame-mugen.jp/adventure/game_11518.html
レビュー感想
今回取り上げるゲームは、ジャンルこそミステリーだが、殺人事件は起こらないし犯人もいない。
代わりにいるのは、自ら命を絶つことが予知された5人のクラスメイトたち。
本作は近い将来起こる自殺の謎を解き、未然に彼らを救う推理ゲームだ。
まず特筆すべきは、ミステリーとしての独自性。
これまで色々なミステリーに挑んできたけど、こんな奇妙な謎に直面したのは初めてだった。
とはいえ自殺を未然に防ぐだけなら、そこまで珍しくはない。
だけどこの物語では、なぜか当事者たちがみんなして辛い境遇にいることを全力で否定してくる。
それも「それ隠す必要ある?」と感じるところでも否定するし、何なら証拠の偽装工作までしてくる。
つまり本作は当事者たちに寄り添うのではなく、境遇を推理して論戦を通して認めさせることで彼らを救う。
……そう書くと、「何かズレてない?」と感じるかもしれない。
そして実際、プレイしてても確かにズレを感じた。
例え辛い境遇を隠したいと思ってても、心のどこかでは気付いてほしいと願う気持ちも一方ではあると思う。
だから何が何でも境遇を隠そうとするキャラクターたちにリアリティは感じなかった。
だけど不思議なことに、そのズレこそが本作最大の売りだと思えてしまった。
実は本作にはミステリー以外にも、型破りな点が至るところにあった。
本作では主人公が5人のクラスメイトと順番に論戦していくんだけど、途中から「今日は〇〇の番か」みたいな感じで、主人公がクラスメイトたちを救ってる状況を全員が受け入れ始める。
そして最後には主人公が「自殺の謎を解く」と宣言して、当事者が「受けて立つ」と返すみたいなシュールな状況になっていく。
思わず「それもう認めてるじゃん」「それ言うなら素直に打ち明けて」ってツッコミを入れたくなった。
……というか実際にツッコミを入れながらプレイしてた。
だけどノスタルジックな雰囲気も相まって、その現実味のなさに心地良さを覚えてしまった。
例えるなら、たまに支離滅裂な夢を見てなぜか感動することがあるけど、それに近い感じかも。
現実味がない意味では人を選ぶかもしれないけど、好きな人はきっと好きになるはず。
グラフィックは水彩調でこのゲームの雰囲気に凄く合ってたし、怪異も可愛い。
システムはただ読むだけのノベルになってないのが良かった。
唯一の難点は唐突にタイムマシンが出てきて、がくってなったことくらい。
総じて小粒ながら心に残る良作でした。
評価C 60点
コラム
今年は本作の他にも、『人間裏街道』や『夕空に落ちた君へ』といった自殺をテーマにした創作が多く出た。
一方でふりーむの規制が厳しくなり、本作は掲載拒否になってしまったらしい。
ちなみに個人的におすすめしたい投稿サイトは、断トツでitch。
詳しくは『フリーゲーム投稿サイトの課題と理想』で検索するといいかもしれません。