墨染楼閣 レビュー感想

プレイ
https://novelgame.jp/games/show/6634

実況
https://www.youtube.com/playlist?list=PLMkQo-m4xY8hAlMyN3p7tK5Ko0RujRITJ

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レビュー感想



とんでもないゲームに出会ってしまった……。


違和感を覚えたのは、このジャンルとグラフィックで実況者が1人もいないことだった。
例えノベルゲームでも絵の綺麗なホラーゲームは一定の人気がある。
だから理由が気になって、特に大きな期待はせずプレイし始めた。

だからこそ、プレイしていく中で評価がどんどん上がっていく感覚は凄まじかったな。


そして読了した今、このゲームが名作だと確信しています

中でも死月妖花や細胞神曲のような、内容の難しい長編をやる人にはおすすめしたい。
更にいえば、長編実況者さんにもおすすめです。



そんな名作を前情報なしでプレイしたい人は注意。
これ以降は多少のネタバレを含みます。(核心的なネタバレはもう少し先)






明治から大正までの異なる時代から集められた人達が、墨染楼閣と呼ばれる閉鎖空間で目覚める。

彼らは気を失う直前、般若面を被った謎の人物に刺殺されていて、墨染楼閣はこの世とあの世の境目だった。

彼らは協力して墨染楼閣からの脱出を目指す。



本作はプレイ時間10時間以上の長編ノベル。

長編といっても無駄なシーンがばっさりカットされてて全くだれなかったのが良かった。


ジャンルはホラーとあるが、雰囲気はむしろデスゲームに近く、本作にはデスゲームものが好きな人を惹きつける魅力とギミックが沢山ある

墨染楼閣を徘徊する凶暴な妖怪は一応いるが、それも恐怖の対象というよりは舞台装置としての役割が大きい。

恐怖から逃げながらの脱出ではなく、あくまでロジカルに解決の糸口を探す。


何よりそれぞれの時代の視点から墨染楼閣の真実に迫っていく展開は、他のゲームでは味わったことのない緻密な面白さがあった。

他にも墨染楼閣の空間に「過去、現在、未来」が入り混じってたり、やり直しの概念があったりと、時間に関するギミックが集大成とばかりに出てくる
それも有名どころのSTEINS;GATEや極限脱出シリーズなどに匹敵するか、それ以上の仕掛け。

それでいて小難しくなく、内容が自然と頭に入ってくるくらい読みやすい


だがそれらのギミックですら、本作の秘める魅力のほんの一部分にすぎない。



以下ネタバレ注意

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ネタバレ

このゲームは本当に何度も上げて落としてくる……。

まさか墨染楼閣を脱出した先が、般若に刺される直前だったとは。
しかも般若は複数人いて、組織的犯行。


同時に物語がまだ終わってないことにも気付かされる。

メタ的に「フリーゲームだしこれで終わりなんだろうな」と思いつつプレイしてたけど、冷静に考えればあれで終わるのには違和感があった。
それでもいざ続くことが分かると、やはり驚きだ。



その後主人公は墨染楼閣で出会った仲間に助けられ、間一髪逃げ延びるも、他の仲間は逃げ切れず、再び殺された事実を聞かされる。

途中からは全員助かってほしいと思いながらプレイしてただけに、生き残ったのがたった2人だけだと知った時は本当に気が沈んだ。


更にその生き残った2人すら、再度現れた般若集団によって殺され、墨染楼閣に戻されることに。






墨染楼閣に戻ったメンバーは本質的な解決を目指すことになる。


そこで今回の事件の主導者が大富豪の御宮司だったことが分かり、その家系が墨染楼閣のシステムに深く関わってることを知る。

ある意味、家系単位で行われる途方もないデスゲームだ。


そうして解決策が徐々に導き出されていくんだけど、その作戦よって歴史が大きく改変すると説明された辺りで、今プレイしてるゲームが名作だと予感し始めた。

とはいえ「本当に歴史が大きく変わる展開になるの?」と半信半疑だったのも事実。



だからこそ作戦通り歴史が大きく変わった時は、「あぁ、このゲーム名作だ」って感動したな。

この展開を全く予想してなかった訳ではないけれど、この規模の変化を矛盾なくやってのけたことは、やはり衝撃的だ。


ちなみに徐々に改変前の記憶の消失が始まって、日記に書き留めておかないと忘れてしまう設定も、個人的には熱かった。

白い子供達の正体は、歴史改変によって生まれないことになった人達と予想してたけど、特にそんなことはなかったらしい。

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総評

その後も希望からの絶望を何度も繰り返し、それでも諦めず最終決戦を征し、そして遂に読了。

終わってみれば、とんでもないゲームだった。



総評としては前述した通り、フリーゲーム史に残る屈指の名作です。

小説として見ても、複雑なプロットなのに粗がほぼない徹底ぶりで、ともすれば文学賞もいけそうなレベル。


とはいえ欠点が全くない訳でもない。

特に演出やゲーム性は良作の域を出ず、それらはストーリーの面白さでカバーしてる感があった。
前情報の出し方も弱くて、時間に関するギミックはある程度ネタバレしていいと思った。

それとこれは欠点とは少し違うが、まだ続きが見たい気持ちもあって、可能なら墨染楼閣のシステム自体を破壊するところまで書き切ってほしい。


といってもそれらはほんの些細な問題。

どうか墨染楼閣の面白さを、自身の脳で体感してほしい。






S 95点