復讐編&激突編
ある日、突如として日常を壊された兄弟。
彼らの壮大な復讐劇がここに幕を開ける。
ゲームジャンルはありそうでなかった非ホラーのアクションADV。
化け物たちは恐怖の対象ではなく、立ち向かう強敵として登場する。
あえて言うなら実況向けの非ホラーゲームだ。
今回は先に欠点から書くと、本作には初心者っぽさがある。
シナリオは志願するだけで警察になれたり、化け物を見ても驚かなかったりする。
ゲーム性は要となるアクションが簡易的で簡単すぎる。
そういった部分が所々にあって、完成度が高いとは言いがたい。
……だけど不思議と、高評価のゲーム以上に没入できたし、心から面白いと思えた。
理由を一言で言えば、完成度だけでは測れない魅力を感じた。
これに尽きるし、ネットの創作は本来そういうものだった。
今はその価値観も多様化してるけど、少なくとも本作からは作者の周囲に流されない創作意欲が伝わってきた。
本作最大の魅力は、他のゲームにはない独特の空気感。
具体的には少年漫画のような熱を帯びつつも、仄かにサスペンス要素を漂わせてる。
中でも主人公である夜一の存在は大きかった。
少年漫画の主人公が熱血だけだとしたら、彼からは熱血と冷血の両方が感じられる。
だけど基本はまっすぐな性格で、あれだけの悲劇を体験しても変に拗らせることなく、あくまで復讐は逮捕と考える真っ当さを持ち合わせてる。
シンクロや感情移入とは少し違うけど、間違いなく好感を持った。
そんな物語もいよいよ大詰め。
散り散りになった仲間を集めて、ラスボスとの最終決戦に挑む。
……そう信じて疑わなかっただけに、本当に衝撃だった。
まさかここにきて裏切り者が現れるなんて。
結局ラスボスへの復讐は果たせず、物語は次なるステージへ……。
暗殺者編
新編に入ると、暗殺部隊という第3勢力が新たに登場。
ここにきて物語は一気に広がりを見せる。
物語も勧善懲悪から、様々な思惑が入り乱れる展開に。
今までが力と力のぶつかり合いだったとしたら、ここからはそこに心と心を通わせる物語も加わった。
つまり第3勢力お約束の、彼らを仲間に引き入れる展開もある。
結論から言えば、この暗殺者編から本作の面白さは爆上がりした。
個人的に勧善懲悪が好きじゃないのもあるけど、それを抜きにしても面白くなってきた。
そもそもだけど、話が進むにつれてゲームの完成度も上がってる。
シナリオは序盤からの伏線が回収されて、予想外の驚きがあった。
ゲーム性は謎解きは程よく難しかったし、アクションは手に汗握った。
プレイ時間は既に10時間を超えてるにもかかわらず、まだまだ終わりが見えない。
ボリュームとしても、もはや小粒とはいえない大作だ。
中でも父親からの手紙の内容は衝撃だった。
……確かに今までずっと疑問には思ってた。
何で兄弟の復讐劇なのに、タイトルが「夜一」の復讐譚なのかと。
だけどその答えがこれ……。
ベタではあるけど、少なくともこのゲームでこんな展開がくるなんて思いもしなかった。
ここにきてのタイトル回収と、不自然な登場人物一覧の穴埋めは、どちらも本当に見事だった。
正直に言えば、このゲームを見くびってたかもしれない。
B 70点